
赤松 洋介
会員数400万オーバー。Twitterで爆発的な人気を誇る動画配信サービス「TwitCasting(ツイキャス)」。ついに世界に打って出た同サービスが何をやってきて、何をやろうとしているのか。CEOの赤松さんが直接教えてくれました!
TVに雑誌、Web媒体など。これまでにも数多くのメディアで取り上げられ、もはや業界問わず 知らない人のほうが少ないんじゃないか?とすら言える「TwitCasting(ツイキャス)」。
10代の若者を中心に400万人ものユーザーを抱え、実にその半数以上がアクティブユーザーという脅威の動画配信サービスの裏側は果たしてどうなっているのか……!
出発前からワクワクが止まらない取材陣、いざ運営元のモイ株式会社へ突撃です!
■記事ハイライト
・脅威のアクティブユーザー率を支える(?) 妙にゆるふわなサービス運営
・壁に掲げられた「忍耐」の文字。その重さ
・コアタイムなしの超フリーフレックス!12時なのにオフィスはガラガラ
・管理はしない。いつだってユーザーとサービスがモチベーションの源泉になる
・世界はまだ便利じゃない。新しいプラットフォームの”選択肢”として
・シリコンバレー拠点の稼働は、まだまだ、これから
御茶の水から徒歩5分、やたらアカデミックな場所に佇むCoolなビル。シャレオツすぎるエレベーターにややビビリながら最上階へ向かっていきます。

あった!あれだ!なんかドア開きっぱなしだけど、多分あれだ!

中に入ってみると……

おぉ……!これは!ツイキャス前に赤松さんがやっていたという初期プロジェクト「Joker Racer」?!
※ラジコンにウェブカメラを積み、ネット経由で操作できるサービス(現在はサービス終了)

うぉ!こっちは初期のツイキャスサーバー(の残骸)!

そしてあれは!
モイに入社したら食べ放題だという噂のフリーおやつコーナー!

(い……意外なほどごっちゃごちゃだけれども)
おやつはともかく、ちょっと歩くだけで出るわ出るわ宝の山!
そして完全に目的を忘れて舞い上がる取材陣の前に、ついにTwitCasting(ツイキャス)の生みの親にしてモイ株式会社のCEO 赤松代表が登場!

「あぁ!TVで観たあの人だ!」という絶叫をなんとかこらえつつ、今回も取材スタートです!
まずはどうしても気になるのが400万人中200万人近くがアクティブだという驚きの「サービスの愛され方」について。
普通なら事業目標にすら設定しないような異常なアクティブ率をどうやって実現したのか。
しょっぱなから本命をぶつけるつもりでガッと質問した所、返ってきたのは「ある意味ビックリ」な逆転の発想でした。
脅威のアクティブユーザー率を支える(?) 妙にゆるふわなサービス運営
―赤松
特にこれといった施策は打ってないんですよ。いつの間にかユーザーが倍になっていて、アクティブな人たちも倍になっていたって感じで。
SNS連携ログインの時にメールアドレスすら取ってないですしね。

あーーなるh………………ゑ?
なんて?
特に何もやってない?どころかメールアドレスすら取得してない?
……いやいやいやいや、そんな馬鹿な。
だってメアドすら取ってなかったらリテンションどうするんですか?ユーザー告知どうやるんですか?
400万もユーザーがいてメアドをマーケティングに利用してないって……マジで?
―赤松
マジですよ。
もちろん人手が足りなくてやってないって部分もあるんですが、僕自身「運営からの一方的なメール送信を望んでいるユーザーはいない」と思ってるんです。
ユーザーが求めてないことをやるつもりはあんまり無いんで、だったらいっそメアドなんか取らなくていいやーってなっちゃったんです。

う……うぉぉおお。
もうなんかAARRRの考え方がひっくり返るような超斬新な考え方ですね。あまりにもユーザー目線すぎるというかなんというか。。。
いやしかし確かに、ユーザーにとっての”良かれ”を最優先して考えればそのとおりでしょうが、それではさすがに『儲けがない』のでは?
こんな質問を僕ら取材陣がするのもおかしな話ですが、「大丈夫なんですか?」
壁に掲げられた「忍耐」の文字と その重さ
―赤松
あはは(笑) うん。確かに最初の頃はもう大変すぎるほど大変でしたよ。
今は15人体制ですが、2012年頃は2.5人体制で「メール対応」「違反映像のチェック」「サーバメンテ」…もうなんか全部やっていましたね。
サーバが落ちたら何時でも自転車でオフィスまで駆けつけて(笑)
ユーザーは順調に増えるものの、収益的にはなかなか伸びず…人を増やしたいけれど収益が上がらない、資金はどんどん減っていく…そんな八方ふさがりに陥ったこともありました。

いや、そりゃそうでしょうよ。
逆にそうならないほうがおかしいです。だってお金取って無いんですもん。
しかし…赤松さんがその頃について語っていた他メディアの記事を見たことがありましたが、実際そこまで大変だったとは……。
常に携帯を肌身離さず、夜も決して酒を飲まず…本気でそんな感じの毎日が続いたんだとか。

壁に掲げられた「忍耐」の二文字。なんだか重みを持って見えてくる。
ひたすらユーザーに愛され、どんどん大きくなっていくサービスを見ながら
それでも耐えに耐えて「頑張って配信してくれているユーザーを裏切れない」と運営を続けてきたツイキャス。。。
例えばコメントを売ったり、もっと広告を出したり、
それこそ数百万人を超えるユーザーに「もっと課金してしまう」という手法を取れば、いくらでもマネタイズの手法はあったハズなのにそうはしなかった。
”それはユーザーの望んだサービスの姿ではないから”
うっ……ちょっとスンマセン。目頭が。
―赤松
懐かしいですねー。で、ネットワークリソース的にも人員的にも限界に達して、2013年頭には一度本気でバイアウトを考えたんです。
「ツイキャス安くしとくよ!」って、Twitterで流して。

3年目は100万人以上ユーザー増えて、今その倍のペースだから500万人規模でシステム考えて増強する。。でもまだまだかー。誰か買ってくれないかなw / @twitcasting_jp: ツイキャスは本日でサービス開始から3周年を迎えました。 http://t.co/ldxhwVzs
— Yosuke Akamatsu (@yoski) 2013, 2月 3
―赤松
そしたらイーストベンチャーズさんから投資したいというリプライをもらって。翌日に焼き肉を一緒に食べて話が合って……週明けには資金が振り込まれていましたね。
で、そこからリスタート。そこから組織化、収益モデルの見直しを行って現在に至るって感じなんです。

は…?
ツイート⇒焼き肉⇒週明け資金チャージ?
早!否!速すぎる!
いやしかし、そんだけマーケットから注目されまくってたってことですよねぇ。
現在は社員も増えて15人体制で…………
…………
…………………………………………
……………………
………………………………アレ?
人、そんないます?このオフィス。。

コアタイムなしの超フリーフレックス!12時なのにオフィスはガラガラ
―赤松
ウチは基本、自由出勤なんですよ。
フルフレックス……というか、午前中疲れているなら午後から出社すればいいってくらいルールが無いんです。
だって集中していない8時間より、集中している1時間のほうが価値がありますし、その方が全体的な効率もアップすると思いますしね。

うぇぇえ?!コアタイムなしのフレックス……!て、出社しなくてもいいってこと?!
(あぁ、今日何回目の驚きだろう。ちょっと疲れてきた。。。)
た、確かに昼の12時だってのに誰もいない。。。
「おはよざまーす」

!!!
今ごろ出社する人がいる!ていうかあれモバツイの創始者だけどなぜかモイにジョインしてるえふしんさんじゃん!

いや、もうなんか自由すぎて言葉も出ないっす。
確かに「その人なりのやりやすい形でやればいい」って方針はメチャクチャ羨ましいですし、心はすでにモイに面接行く気マンマンですけど……。
ぶっちゃけ、こ、こんなんでチームとしてやっていけてるんでしょうか?無駄に不安になってきました。
―赤松
多分大丈夫ですよ。
毎週金曜日にはみんなで集まって昼ごはんを食べる「フライデーランチ」制度もありますしね。
おお!なるほど!
そこに全社員が集まってそれぞれの状況や心境を共有しているんですね!なんて素敵な!ぜひウチでも取り入れ……
―赤松
あ、いや。全員じゃないですね。強制でも義務でもないんで「参加したい人だけ参加」って感じです。
ですよねーーーーー!!!
だろうと思った!
だろうと思ってましたよ!だって「多分」って言ってましたし!
いやしかし、再度の質問になりますが、そんなゆるゆるなノリでモチベーション管理とかってどうやってるんでしょう?一周回って興味が湧いてきました。
■管理はしない。いつだってユーザーとサービスがモチベーションの源泉になる
―赤松
いや、モチベーション管理とかは特にやってないんですよ。
「ユーザーにとっていいものを作りたい!」という気持ちがめちゃくちゃ強いメンバーが集まっているので、その点は全然心配してないんです。

いやほんと、さすがは忍耐の人。全くブレない解答をありがとうございます。お腹いっぱいです。
と、その赤松さんの言葉をうけて、横に座って今の今まで存在を消していた事業企画の丸吉さん。なんかスイッチが入っちゃったみたいです。
―丸吉
ツイキャスというサービスそのものに、モチベーションを刺激されているんですよ。
カフェで仕事をしている時、電車の中、何気なく見た大学生や高校生が「ツイキャス超楽しい!」なんて喜んでいる姿を見たりするともぅ……もぅ!!
本当にこの仕事が楽しい!って思うんです。これでモチベーション上がらないわけがないじゃないですか!

超高速でろくろを回す丸吉さん
おぉ……おぅ。
と、やや引き気味の取材陣そっちのけでマシンガンのようにツイキャス愛を語り始める丸吉さん。
若干目が怖かったですが、実際に開発スタッフ間でも「推しキャス」なるユーザーがいたり、キャンペーンにユーザーと一緒になって参加したりと。とにかく毎日楽しみまくっているんだそう。
丸吉氏の言葉を聞いて、「僕はそんな現場に遭遇したことがないなあ……」と、思いっきり残念そうに肩を落とす赤松さんの姿とセットで、サービスの作り手がどれほど楽しんでいるのか?を物語っていました。
世界はまだ便利じゃない。新しいコミュニケーションプラットフォームの”選択肢”として
―赤松
ツイキャスはまだ、エンターテイメントの域を出ていません。
私たちモイが掲げる目標は「それがないと生活が困る」ほど、世の中に求められるサービスなので、そこに至るまでは、まだまだ数々の挑戦をしていかなくちゃいけない。
そのために私たちはこれから、コミュニケーションインフラとして、ツイキャスを成長させていかなければいけないと思っています。

赤松さん曰く、社員に自由にやってもらうことも、徹底的にユーザーメインでサービスを作ることも根本は同じなんだとか。
「生活を良くしたい」
言葉にすると非常に陳腐ですが、この言葉を繰り返し語ってくれました。
ただし、「生活の良さ」は万人にとって同一のものではなく、その人それぞれによって考え方も捉え方もやりかたも全部違う。
だから例えば、ひとりごとはTwitter、仕事の話はFacebook、友達とのやりとりはLINE……といったラインナップの中に、「○○はツイキャス」という人を増やし、それを当たり前にしていくことこそが目標なんだとか。
なるほど。だから働き方も何もかもが個人のやりやすいようにやる。ということなんですね。
超納得。超感動です。
―赤松
もちろん、今の段階ではエンタメと割り切ってサービス運営を続けていますが、その域からいずれ出ようと思っています。
映像配信だけにこだわらず、より多様なコミュニケーションの在り方を提案していけるプラットフォームを作っていきたいんです。
正直、まだまだ世界は便利になっていないと思うんですよね。

「世界は、まだ便利じゃない」…その言葉、胸に刺さりました!
確かにコミュニケーション手段は増えに増えましたが、そのどのサービスにも属さないコミュニケーション欲求はあるし、定番サービスにがんじがらめになっている人々もいるのも事実。
まだまだ世界は”便利になるべき余地”があるんですね!
さて、そうなると……
この間発表された「スマフォ1台、ライブ配信コミュニティ「ツイキャス」400万ユーザー突破でシリコンバレー進出」の続きが俄然楽しみになってきました!
2013年11月の発表から約半年、今あれってどんな感じなんでしょう?
シリコンバレー拠点の稼働は、まだまだ、これから
―赤松
う〜〜ん。えーっと……。
海外展開におけるマーケティング拠点としてオフィスを立ち上げました。…が、実は2013年の12月に借りて以来、ぜんぜん使っていません(笑)
今のところ僕が出張で、2週間滞在しただけなんですよ。まずは日本の基盤を、もっと強化しなければいけませんからね。

あ、あらま。
いや、しかし逆にすごく「らしい」っす。
まずは目の前にいるユーザーから。ですよね。
もう驚きませんよ! ありがとうございました!
まとめ:純粋なまでにユーザーに対して本気な大人たち

急成長&大注目サービスを手がけた張本人でありながら、やたらと腰が低く(さすがに失礼な気がするけど他に言いようがない)、しょっぱなから良い人オーラ全開でインタビューに応じてくれた赤松さん。
ツイキャスの話になると目つきがちょっとアレになる丸吉さん。
社内の人、そして雰囲気含めて、とにかく全員が「ユーザーのために!」と全力で考えている姿が最高に格好よかったです。
本当の意味でユーザーと一緒に作っていくサービスってこういうことなのかな?
などと考えさせられながらも、「真似できるかーーー……」と、若干の絶望感を味わった素敵な体験でした!
また来ます!(履歴書もって)
モイ株式会社の会社概要
会社名 | モイ株式会社 (Moi Corporation) |
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代表者 | 赤松 洋介 |
設立 | 2012年2月29日 |
所在地 |
〒101-0052
東京都千代田区神田小川町3-26-8 野村不動産神田小川町ビル |
事業内容 | ライブ配信サービス「TwitCasting(ツイキャス)」の運営 |